祝子川 沢登り アルパインユースクラブ 夏合宿 2日目 沢ビバーク編

    【日程】2022年8月27日(土)~28日(日)

    【行程】

    8月26日 日ノ尾峠=延岡市買い出し=上祝子登山口近くにて前泊

    8月27日 08:15前泊地=08:25上祝子登山口-09:05大崩山荘-09:50祝子川徒渉点入点-18:05ビバーク地

    8月28日 09:15ビバーク地-10:55大崩山荘-11:50上祝子登山口=広島

    【参加者】 5名

    【登山概況】 リーダー(Y・O)

     

    前日の根子岳からの祝子川へ移動、アルパイン装備と沢装備の両方が必要だった為、メンバーは事前準備が大変だったと思うが、なかなか休みが取れないメンバーが楽しみにしていた3日間を充実した山行にしたかったので祝子川ビバーク沢登りを計画した。T SL以外は初めて入渓する沢なので、いろいろな情報を仕入れたが調べれば調べるほど、楽しそうな沢だ。ただ殆どがゴルジュなので出渓地点ぐらいまで進まないとビバークできそうな場所はなさそうという事が判った。

     

    根子岳の興奮も覚めやらぬまま、熊本から宮崎へ移動、道中に寄った延岡市で食べたチキン南蛮が思いのほか美味しくて、いつもは買出しでしか寄らない延岡市が、とても良い街だと心変わりした。幸い明るいうちに入山口の近くに前泊地を見つける事ができ、先発隊で急いで宴会設営、暗くなって、釣り餌と買出しをした後発隊が到着し二日目の宴会が始まる。今回、初めて山行を共にするメンバーもいる中でこうした時間が、今後の山行に向けて一番、大切な時間だと思う。翌日は起床時間を決めず、大量にある冷えたビールで夜が更けるまで懇親を深めた。翌日は6時頃から、ゴソゴソと起きだし、朝食を取り8時過ぎに前泊地を車で出発、遅い出発なので登山口の前に車を停められなかったら面倒くさいなと思っていたが、前日の偵察の時より車は少なく少しだけ離れた場所へ停める事ができた。ギアを装着し上祝子登山口から入山、ここから入渓地点まで一般登山道だ。途中、梯子の場所やフィックスが張っている場所もあり一般登山道にしては危険な箇所もあるが根子岳を越えてきた我々には問題なし。ただ沢装備の為、歩きが長いと暑くシンドイ、早く入渓してしまいたいが、意外に入渓地点まで長かった。大崩山荘を過ぎ、30分ほど歩くと漸く入渓地点が現れ登山道を外れ踏み跡を辿る。真っ白な石灰岩と透明度の高い水に太陽があたりサングラスを着けたくなる眩しさでワクワクが止まらない。まだまだ広い渓相の中に巨大な石が続き越えるたびに新しい景色が広がりまるで迷路のようだ。ラバーの沢靴のグリップもいい。次々と新しいアトラクションが現れ飽きる時間もない。少し楽しみ過ぎたのか時間が押してきていたが、暗くなるまでに着けば良いので滑り台飛び込みをしたりワイワイしながら進んでいるとゴルジュ帯にいよいよ入ってきた。最初に現れるのが核心だと思っていた二条の滝、水流の右側にペツルが2本打ってあるのが見える。アブミを掛けたら登れそうだが、滝下まで泳いでいくのが大変なので、素直に巻く。この巻き道も曲者で、10mぐらいのスラブを登らなくてならない。そしてアブミを掛ける為に付けていたであろうリングボルトが抜けたのか誰かが抜いたのか、痕跡しか残っていない。O、T、OSでジャンケン、勝ったものがルート工作、見事、勝利を収めたのはスラブが苦手なT、二人の肩ショルダーで最初の棚を掴み、棚に立つが予想通りスラブで動けなくなり敗退・・・選手交代でOが行く。アブミも持って登ったが、そこまで難しくなかったのでアブミは使わず巻き道の斜面に抜ける。その後は一人一人、肩ショルダーで棚を掴み、あとはアッセンダーで登ってきたが、最後の一人が登れない。ロープを掴んで強引に行けば棚が掴めるだろうと思っていたのですが、最初の支点の位置が悪く左に降られるようで何度チャレンジしても登れない。結局、Nがもう一度降りて、別のロープで引き上げた。ここでも大幅に時間を使ってしまい内心、気持ちは焦ってきた。こういった場合は、どうしたら良いのだろうと考えていたのですが、最後から二番目の人が棚まで上がったら、そのまま進まずに最後の一人を引き上げてから、進めば解決だったと反省。今後の糧になった。二条を越え、さらに続くゴルジュ帯を進んで行くといよいよ「30㎝ゴルジュ」見るからに楽しそうであるが、泳ぎが長い、泳ぎが得意な救助隊Nにロープを結び、滝下まで引っ張ってもらう戦法でスタート。泳ぎは思ったほど長くなく、半分ぐらいからは左右の壁に足が届く。ハの字でステミングし、どんどん狭い箇所に入っていく。そのあたりから、待機組をロープで引っ張ってもらおうと思っていたが、Nもそのままステミングで滝の攻略に入って行く。水面からかなり高い位置で支点もなくステミングをしているのを、遠くから眺めているのは、落ちないでくれ~と思いながらドキドキした。「ハ」の字になったり「へ」の字になったり「ヒ」の字になったり苦労している。しかし救助隊Nは力尽きる事はない、半ば強引に枯れ木を掴み越えて行った。皆で拍手する。そこからT、OS、K、Oで越えて行ったが、なかなか苦労し時間も掛かった。日没まで2時間となってきた。ここを抜けたら、ゴルジュ帯が終わるのはないかと思っていたが、まだ続きがあり、しかも難しい、Oが先行して難しそうな箇所に先にスリングなどを掛けながら進み、なるべく時間をかけないように進んでいく。そして、大きな岩を巻くと漸くゴルジュ帯が見えてきた。そのまま先行しビバーク適地に、漸く荷物を降ろす。時間は18:05結構、ギリギリタイムだ。ただ待っていてもしょうがないので一人で薪拾いをしながら4人を待っていると15分ほどでやってきた。暗くなる前にビバーク地を設営したいので若者3人に大量の薪拾い、Kはすぐに夜食準備の指示を出し、Oは冷えた身体を温める為のハイカロリー焚火の準備、根子岳、前夜祭とコミュニケーションの深めた最高の5人は、無駄な時間一つなくテキパキと役目をこなし、薪拾いが終わり、タープを張り終えると同時にキムチ風もつ鍋も美味しいご飯も炊けていて、すぐに第二夜の宴会を始める事ができた。この夜は満点の星空と強く燃える焚火を肴に「山以外」の話しで盛り上がり、さらに団結力を深める事ができた。時間は判らないが一人一人、力尽きていきながら朝を迎えた。折角、2枚も張ったタープの下には誰もおらず、河原で熟睡している。T、OS、Kは寝袋さえ入らず転がっていた。本当に頼もしいユースクラブになりそうだと思いながら焚火に辺りながらコーヒーを呑む。片付けを始めたら、この最高の時間が終わってしまうなあ、明日からまた現実時間が始まると思うと悲しくなってくる。朝から、帰るだけなのに朝から、また米を炊き大量に皆で食し、最高のビバーク地を綺麗に片付け、最高の3日間は終わりとなりました。来年は是非、予定だった北方稜線をこのメンバーで歩けたら良いなと思います。

    【感 想】

    (N)

    ユースクラブに入り2年目、少しずつクライミングの基礎を学び、初の合宿参加である。

    以下、当合宿に参加した所感をまとめた。

    ・事前準備について

     当初予定されていた剱岳北方稜線から、急遽場所が変更となり地図は持参したものの、読み込みが足らず、ルートファインディングはリーダー任せになってしまった。 危険箇所、目標物など把握し、ネットなどの情報も取り入れてしっかりと準備して次回に臨みたい。必要な道具、準備物は不足することなく準備することができた。

    ・体力面について

     テント泊装備での縦走を想定し、数か月前から歩荷訓練、筋力トレーニング等で下半身を強化したことで、体力不足を感じる場面はほとんどなかった。「筋肉は裏切らない」と実感。今回の山行は1泊2日の行程だったため、荷物は少なめだったが、さらに長期間、長距離の縦走を考えると、さらなる筋力・持久力アップが必要だ。

    ・装備準備物について

     装備は3ミリのロングジョンのウェットスーツに上はアンダーアーマーのロングスリーブ、ライフジャケット。じっとしていれば寒さを感じることがあったが、快適であった。入渓までのアプローチに1時間程度登山道を歩くときは、暑くて汗だくになった。沢登りの体温調節は難しい。気温、水温に合わせた装備を考える必要がある。

     自分にとって一番の核心であった30cmゴルジュ。あまり戦略を練ることなく突っ込み、チムニー状態で動けなくなった。何とか自力で乗り切ったが、力尽き落下の危険性があった。ビレイ体制が整うまで待つ、他のメンバーの判断を仰ぐなど慎重な行動を心がけるべきだった。流木に足を滑らせ2m程度転落。けがなし。足の置き方、グリップするかの判断ができるように。自分にとって沢登りは2回目であり試行錯誤の連続だった。沢登りは、普通の登山やクライミングと違い、パーティ全員でお互いに協力しながら障害を乗り越えていく、まさに「チームスポーツ」だと思う。行く先々で、みんなで知恵を出し合い、力を合わせ、困難を突破していくところに沢登りの醍醐味を感じた。そこで感じる一体感、達成感は普通の登山では味わえない。合わせて、透き通る沢の水、滝のしぶき、大自然を肌で感じることができた。夜には焚火に火を灯し、苦労して持ってきた食材で最高の食事、仲間と旅の思い出を語らい、最高の時間であった。まだまだ最高の時間を味わいたかったが、河原に横たわり満点の星空を眺めていると、いつの間にか眠りに落ちていた。最高の夏の思い出は全員事故なく終えられたからこそである。それはメンバーの方々の確かな登山技術に裏付けされたもの。今回の合宿で登山技術の向上と自信につながった。仲間と共に、安全登山のためさらに技術を磨いていきたい。

     

    感想(T)

    昨年、悪天候で北方稜線を敗退した為、今年こそは踏覇したいと願っていたが、剱の天気予報は雨…。予備案の九州遠征に変更となり「今年も、ダメかぁ」と少し残念な気持ちで挑んだが、祝子川の美しい景観と透き通るほどに奇麗な水質が諦めのわるい気持ちをすぐに沢モードにスイッチを入れてくれた。数年前に一度だけ訪れた事があったが白い巨石の奇観と30cmゴルジュで走り幅跳びした記憶しかなかったので、ほぼ初ルートの感覚だった。西中国山地では味わえない、巨石の数々にまるで迷路に迷い込んだようでルーファイも一苦労。二条の滝は高巻を選んだが、テラスに乗るまでは、補助が必要で一人が登る度にショルダーを行った。私は最後だったので、ロープにアブミを掛けて登ったが、ロープが左に振られ宙ぶらりんなり、なかなか登れず…30分ほど苦戦し体力が無くなりそうになったので、Nさんに、もう一本ロープを上から垂らしてもらい引き上げてもらった。高巻後、沢に復帰すると両サイド100mはある大スラブのゴルジュ帯。この先は高巻する事も引き返すこともできそうもなく進むしかない。そして突破口は全て私の苦手なスラブ…。リードの出番もなさそうなので二番手に登り後続の荷物の引き上げを手伝うことに専念。ラスボスの30cmゴルジュはリードを覚悟していたが、Nさんが先頭を行きステミングで倒木を頼りに見事登りきった。近くで見ていたが、とても真似できないバランス感覚と人間離れした腕力と気力には感服した。30cmゴルジュはV字に切れ上がっていてステミングで上に上がれば上がるほど楽になるのだが万が一足を滑らせて落ちた時はハマって動けなくなりそうで怖い…。ステミングがきまるギリギリの高さのところを維持して上がり過ぎない様に進み倒木を手掛かりにしながらなんとか登り切った。もうこれで終わりかと安心していたがCSの小滝が現れ、洞窟の中を進んで、いくつかの関門を突破して、なんとか暗くなり前にビバーク地に到着できた。休む間もなくすぐに焚木の調達と食事の準備を分担して宴会が整いやっと一息できた。今回のあっという間だった3日間の合宿の思い出を語り尽くし、来年の北方稜線のリベンジと剱の山頂でエアロスミスの『ミス・ア・シング』を皆で聴く事を誓い今回の合宿を終えた。

     

    #祝子川

    【ヒヤリハット報告】

     なし

    【写真】