根子岳 アルパインユースクラブ 夏合宿 1日目 アルパイン編

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    【日程】2022年8月26日(金)

    【行程】

    8月25日 日ノ尾峠登山口駐車スペースで仮眠

    8月26日 04:50日ノ尾峠登山口-05:55展望台-10:15根子岳-13:45道路へ下山=日ノ尾峠登山口=宮崎へ移動

     

    【参加者】 5名

    【登山概況】 リーダー(Y・O)

     

    ユースクラブの夏合宿縦走編として半年以上前に計画を立て剱岳北方稜線を縦走予定で、それぞれが準備をしてきていたのですが、天気予報は好転する事なくギリギリまで悩みましたが6人という人数、パーティーの半分が大きな山のバリエーションは初めての経験になり天候が悪い中、無理をして突っ込むのはリスクが高いと考え、予備案の九州合宿に変更としました。根子岳を選んだ理由は岩稜帯や細尾根、ロープが必要な登攀、何度もあるラッペルと短いながらに今までトレーニングしてきた事を活かせるという事、今までにないバリエーションを経験する事で更に成長できる山になるだろうという思いから決定いたしました。前日の昼過ぎ出発組と夜出発組の2台に分かれて広島を出発、日ノ尾峠登山口集合、先発隊のO、Kは前日の19時半頃到着、早速、焚火を集め前夜祭を開始、明日からの事を考えると眠気も吹き飛ぶが午前零時、消灯。鹿の鳴き声が直ぐ近くで聞こえる。出発が予定より遅れた後発のT、OS、Nが4時に到着、車の音で我々も目覚める。もう仮眠をする時間もないので、すぐに準備を始めハーネスもギアも装着し、予定より10分ほど早く出発、暗闇の中で藪漕ぎをしながら黒土の急登を黙々と進む。踏み跡が多く、尾根からあまりハズレないように注意をしないといけない。基本的に展望台まではずっと急登が続き藪を掴みながら登っていく。途中、長めの休憩を入れたものの1時間ほどで展望台に到着、ここからの景色を皆に見て欲しいと思っていたのですが、2度目の私ですら感動するほどの絶景、パタゴニアのロゴのような山稜に朝日が当たり感動的だ。阿蘇の山脈も素晴らしい。ここでも暫し休憩し、いよいよ縦走路に入る。少し進むと緊張感を高める「転落事故死あり ベテランリーダーなしでの進入は絶対禁止します」という看板の文字の前に更に2年前にはなかった張り紙が貼られている「危険 転落事故死あり 進入しないでください」と赤い文字で書かれている。事前の調べで地震の影響で岩が脆くなっている事は書かれていたが、それは2年前も同じである。追い張り紙で更に緊張感が高まっているパーティーの雰囲気を感じ、少し嬉しくなったのと同時にしっかりフォローしながら進もうと気合いを入れる。トラバース気味に進むと、崩落した箇所を通過する。2年前とさほど変わっていない。頼りないフィックスロープがあるが、あまり頼らず進む。暫くするとラッペルポイント、何本もの残地ロープに鉄のカラビナが付いている。出発前にも天応で練習したKも安定して降りてきて安心する。根子岳ピークの基部までいくつもの危険個所があるが全員、臆することなく順調だ。岩峰が縦に切れたような場所も3箇所あり下をのぞき込むと怖い。大股で1歩程度だが飛び越えるのも怖い。フィックスがある場所はセルフを取り飛び越える。ゴジラの背のような箇所は、みんなの様子を見てノーロープで進む。一人一人、ローソク岩をバックに記念撮影、少し休憩して進んで行くと、いよいよ最終の岩壁、根子岳西峰の基部に到着。1ピッチ20mはフェイスを登りカンテに向け左上、回り込んだ処の岩が脆く、2年前に怖い思いをした。2ピッチは5m程度のスラブになる。Wロープ50mが2本あるので流れが悪くなさそうなら2ピッチ繋いでいく事にする。Tにリードをお願いしようと思っていたがOSが「行かしてもらっていいですか?」と立候補。クライミング能力的には充分だがアルパインルートの登攀や慣れないダブルロープに不安があったが、残置支点もたくさんあるしヌンチャクもアルパインヌンチャクとトランシーバーも全部持っていけば大丈夫と判断、カンテを巻いた処の脆い箇所を気をつけてとアドバイスしOSに任せる。OSは順調にロープを伸ばして行く、岩が脆い地点も落石も起こさず、1ピッチ目終了点に到達、そのまま2ピッチも行けそうかぁー?と声を掛けると「行けそうです!」と普段、聞いた事がないハキハキとした声で返答が返ってくる。そのまま2ピッチ目もロープを伸ばし、暫くしてトランシーバーから「着きました!今から終了点を作ります!」のまたもやハキハキとした声が帰ってくる。達成感からか凄くテンションが上がっているようだ。下にいる皆まで嬉しくて「今日のおっくん、どしたんやぁ」と喜んでいる。中間でN、Kと進み、最後にT、Oで全員が登攀終了。終了点に着くとハキハキしゃべりに声変わりしたおっ君が達成感抜群の顔をしながら「楽しかったです!」とハキハキと喋っている。連れてきて良かったなぁーと嬉しくなった。ここから30mぐらい先がピークなのだが踏み跡は細く、両端は絶壁、幸いにも低木が生えており掴みながら行けるが、あまり気分のよくない細尾根を進み、遂に根子岳ピークに到達、全員が握手し合い登頂を祝い、暫し記念撮影タイム。頂上に着いた時だけガスがあがってきて絶景は拝めなかったが、ここまで登ってこられた嬉しい気持ちの方が強く、大満足な表情である。15分ほどゆっくりして下山開始、慎重に細尾根を下り、終了点から懸垂下降を終えると久しぶりに広い地面に戻ってきた気分だ。そこから少し戻ると下山路への下降地点がある。ロープを繋ぎ、一気に2ピッチ分を下降、暫く踏み跡を辿ると、次は25mのラッペル、ここもけっこうスリルがあるが、もう皆、慣れたものだ。落石が少しあった。そこから少し下るとガレた沢が見えてくる。2年前はラッペルしてガレた沢に降りたが、落石が多く大変だったので、今回はなるべく支尾根を末端まで下り、沢へ無事に降りる事ができた。沢を下りきると、藪路が始まる。暗くなると迷いそうなほど、背丈も高い藪で踏み跡も判りにくいが慎重に進むと大丈夫。最後に少し管理道を歩くと道路に出た。本当は出発前にここに車を1台デポしておけば良かったですが、早朝出発で真っ暗だったので、面倒くさくなりデポしなかったのですが少し後悔。出発した日ノ尾峠まで登り坂で2キロもある。ボチボチ歩こうかと思っていたが、T、Nがなんと車まで走って、どっちが先に着くか競争します!ここで待っといてください!しかも「20分以内に戻ってきたらご飯奢ってください」とやる気満々である(笑)登りの2キロで車に乗って戻ってくるのは、流石に無理だろうと思いOKを出す。ストップウォッチをセットし、マラソンのスタートのような感じでT、Nがスタート、Tがスタート直後からリードし二人ともアッという間に見えなくなった。そしたら、行かないと思っていたOSまで僕も走ってきます!と走りだした。若いって素晴らしい、、、O、Kはザックを枕にしのんびり青い空を眺めながらのんびりする。そして、20分が経ったなと思った頃、なんとTがデリカに乗って戻ってきた。タイムは21分40秒!「20分過ぎた、残念~」と言ったものの、本当にとんでもないスピードである。広島から寝ずに来て、8時間以上、山を歩き下りてきて、すぐに超速のマラソン、本当に凄い、爽やかな汗をかいたTは、おばちゃんとの離合に時間がかかった、イノシシが出てきたとか言い訳をしていたが、本当にそれがなかったら20分を切っていたと思う。車で登山口に戻ると「牛飼いT」に負けた「救助隊N」がガックシしていた(笑)OSもハイスピードで前に追いつくスピードだったらしい。頼もしいユースクラブになりそうだ!

    【感 想】

    (K)

    Oリーダーの車に同乗させていただき、登山前日ギリギリ日没前に根子岳が車中から目視できる距離まで移動してきたところで、Oリーダーから「あのギザギザになっとるところあるじゃん。アレ行くから。」と言われた時は、内心、『まるで日本昔話の描写ではないか!』と愕然としました。翌早朝、展望台から見ると想像以上の日本昔話状態にスキルの無い私は果たして行けるのかと不安がよぎりましたが、Oリーダーが居るとなぜか死ぬ気がしない不思議な力が湧き起こり、あとは行くだけ登るだけモードに突入。行けば行くほど感動の嵐。切り立った尾根とキリッと晴れた空とのコントラスト、低い山なのに掴めそうな程近くに雲がわき、よくある水墨画のモチーフの中に居るようで、勝手に仙人になった気分でした。スキルの無い私をOリーダーを初め、皆さんがフォローしてくださり、安全にあのステージに連れて行っていただきましたが人に感動を与える方法にはこんな方法もあるのかと、早く私もこの立場になりたいと強く思いました。メンバーの皆さま誠にありがとうございました!

     

    (OS)

    Nさんの車に同乗させていただき、現地入り。車で移動中、途中の峠から急に道が悪くなり、アスファルトが割れていたり、石が転がっていたりと明らかに人が入っていない場所に向かっている雰囲気で、不安になる。車止めのゲートを抜けて少し行ったところで集合場所に到着、4:00になっていた。そこから準備して、ほぼ予定通りの5:00に出発。入口の看板に熟練者以外通るなという趣旨の文章が明記されていてさらに不安になる。自分は生きて帰れるのだろうか。リーダー先頭で1列になってヤブの中の尾根道を進んでいく。自分は道に迷いそうとのことで、3番目に入れていただく。火山灰なのだろうが、滑りやすい黒土の足場でヤブ漕ぎはしんどい。リーダーは踏み後があると言っていたが、自分にはどこを進んでいるのかよくわからない。ここで置いていかれたらGPSで地図を入れているとはいえ、大変な事になると思い必死についていく。途中休憩を入れて1時間ほど歩くと、展望台に到着した。ちょうど、根子岳の山稜に朝日が当たっており、とても日本とは思えないような絶景で、ここまで来ただけでもよかったと思った。同時に、まだまだ序盤であり、今からこの尾根を進んでいくのだと思い気を引き締めた。しばらく進むと、また注意書きを発見、熟練者でも危ない場所にいるそうだ。こう何度も注意されると本当に危ない場所にいるんだという実感がわく。注意書きを抜けるとすぐにボロボロになったフィックスロープが出てくる。正直使いたくないかったが、進むために仕方なく使用する。変に体重がかかって切れたりしませんようにと祈りながら通過した。そのあとは、ラッペルポイント。今まで見たことないほどボロい。何重にもなったロープスリングと錆だらけのカラビナがついていて、何かの拍子にちぎれそう。皆平気そうに降りていたが、自分は、内心びくびくしながら、懸垂下降する。運よく切れなかったが、次の時はどうなることやら。自分は、この辺から危険な場所にいるのに慣れてくる。次は、下が見えないほど切り立った断崖の通過。一歩ほどの断崖だが、結構怖い。一応フィックスロープが張ってあるがこれも頼りない。前二人が簡単そうに飛び越えるので、勇気をもらって自分も通過。特に危ないと感じることもなかった。このような断崖は3か所あった。1人がギリギリ通れる尾根道を順調に進んでいくとゴジラの背(仮称)に出る。ここも難なく通過。遠くから見ると行けそうになかったが、近づくと手も足もある登りやすい岩だった。ここでローソク岩をバックに記念撮影。結構いい写真が取れたと思う。最後に根子岳西稜を登る。20mの1ピッチのフェイスルートと5mの1ピッチのスラブルートの2ピッチであった。リーダーがよく天応で練習している凹角より簡単と言われたので、自分にリードさせてもらえないかと思い立候補する。内心、ダブルロープ引いたことないし、リーダーかTさんがリードするだろうと思っていたら、行かせてもらえることに。下から見ると簡単そうとはいえ、初見のルート、ワクワクしながら、取付く。1ピン目まで足場は悪くないが遠い。ホールドを探しながらなので結構時間がかかる。1ピン目を取ったら安心したのか順調に進む。ボルト沿いに進んでいくと、4ピン目か5ピン目くらいの途中からやけに石が動くルートになる。ちゃんと持てるか確認しながら慎重に進んでいく。下で確認したトポ図を見るとそろそろ1ピッチ目の終了点があるはずなのに見つからない。正直焦る。どこかでボルトを見落として変なところにいるのだろうか。しかし、側面の壁をよく見ると、1ピッチ目の終了点のラッペルポイントに使われている残置ロープが見えた。助かったと思い、終了点に向かう。ここで、ロープ半分のコール。残りは5mのはずなので十分いける。リーダーに確認取ったところ、ロープの流れを見て行けそうならいってよいとの判断。なんとなく行けそうなので、行かせていただく。2ピッチ目はスラブだったが、結構良いところにガバホールドの手があり、それほど苦労することなく登りきる。2ピッチ目の終了点もラッペルポイントになっていたが、残置物に負荷をかけないように終了点近くの木を2本使ってセカンドの引き上げを行う。引き上げは、中間の2人はアッセンダーを使って上がり、最後の2人が下から登るという手順で行った。ダブルロープは初めてだったので、最後の2人のロープを交互に引っ張ってあげるのが上手くいかず、Nさんに手伝っていただいた。5人無事に2ピッチ目の終了点についたときは正直ほっとした。終了点から徒歩で少し上がったところが根子岳西稜の頂上で、5人で記念撮影したときは感動した。正直、テンション高い状態だったと思う。わざわざ、岩の上に登り、根子岳のネームプレートをもって写真を撮ってもらった。記念撮影の後はすぐ下山開始。根子岳西稜基部までラッペルして、ローソク岩巻道の途中からまたラッペル。ラッペルにも慣れて皆スムーズに降りて行った。ラッペルが終わると、沢筋に出て砂防ダムの脇までほとんど水のない沢を下った。この沢はほとんどガレ場になっていて、いつ石が落ちてくるか一瞬不安になったが、ここを行くしかないので、覚悟を決めて降りる。石が落ちてくることはなかったが、足元が不安定で崩れる石に注意しながらの通過になった。沢を通過後、砂防ダムまで行ったら難所は終了と思っていたら、砂防ダムからも長かった。ほとんど人が入らないので砂防ダムまでの道がヤブ化していた。普通の道があると思い込んでいたので想定外だった。その後、思ったより時間がかかったが、一般道と合流。後は一般道を2~3km歩いて出発地点に戻るだけと思っていたら、Tさん、Nさんが競争しながら車のキーを取りに行くとのこと。空荷で元気よく走っていく二人。楽しそうだったので、自分も後から追いかけることに。出発5分で後悔。思ったより坂がきつい。しかも登山後でいつもより足が上がらない。行くと言った以上は行けるとこまで行こうと走ったり歩いたりしながら車に向かっていると、後300mくらい残したところで前方よりTさんが車を運転してくる。ほんとにすごい体力だと思う。リーダー、Kさんを拾いに行くので登山開始地点で待っていてと言われて残りの300mを歩く。Nさんと一緒に10分くらい待ったらTさんが2人を乗せて帰ってきてこの日の登山は終了。出発前にはいろいろ不安になったが、結果としては、大変面白い登山だった。特に、根子岳西稜を登らせてもらったのは楽しかった。皆リードをやりたがる理由がわかった気がした。ヤブ漕ぎのルートファインディングの練習をしてまたこのような山に行きたいと強く思った。

    【ヒヤリハット報告】

     なし

     

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