南岳西尾根 冬山合宿(個人山行)
【日程】2021年12月31日~2022年1月2日
【行程】31日 新穂高6:10~11:30西尾根取付~13:30西尾根BC2130m
1日 BC2130m 4:30~デルタ岩壁6:30~マッチ箱8:30~南岳頂上10:45~BC14:00
2日 BC撤収4:40~新穂高8:50
【参加者】3名
【登山概要】リーダー N
(31日)前夜発。高山に0時前に到着するが、街のあちこちで除雪作業が行われていた。平湯方面は渋滞と電光掲示板にあり、スタックして動けなくなっている車があるかもしれないと、飛騨古川方面から回り込んで新穂高の最寄りの道の駅で車中泊。朝から雪がしんしんと降り続けているが、槍平までのトレースは、さすがにバッチリ残っていた。滝谷の出合からはところどころ雪に足をとられる為、ワカンを装着して歩く。南沢に出合ったところで、ノートレースの南岳西尾根の斜面にラッセルを開始した。思っているほど新雪感がなく、1週間前に大量に降って以来、まとまって降った感触がない。締まりやすく、膝上から腰程度のラッセルで高度を稼ぐ。ただかなり急登であり、NはO・H若者2人のスピードについていけなかった。荷物があると本当に弱くなったのを痛感。ちょうど2130mが尾根が平坦になる箇所であり予定どおり、この日はここで幕営とした。夕食のウマ塩鍋キューブ雑炊を食べて就寝。
(1日)夜中から、相当の強風が吹いている。まるで滝がすぐそばにあるようだった。ただ、今日は絶対にイケると天気図から判断していた。朝食のキムチ鍋キューブ雑炊を食べてヘッデンをつけ4時半に行動開始。ガスが濃く、風も強いが、まだ樹林帯なので動ける。デルタ岩壁の下のルンゼ状のトラバースに注意しながらワカンで進んでいくと、少しずつ悪くなってくる。帰りは懸垂だねと話をしていたところ、2400mデルタ岩壁に到着。過去2回ノーザイルで登っている傾斜の落ちたⅢ級程度の岩場だが、今回は初心者もいるので、Oリードで20m程度ロープを伸ばす。そこからしばらく進むと夏道に合流し順調に進む。リッジが細くなってきたところで、ちょうど良い大岩が現れ、風も凌げるので、ここで初めて休憩をとる。2700mマッチ箱には雪が乗っており、払いながら跨いでいく。過去の偵察山行でリングボルトがあったことを覚えていたので、掘り返してランニングをとり通過。そこだけが嫌らしく、あとの細リッジは大したことはない。帰りに同じ箇所を通るので、ここにロープをFIXにして残しておく。ただ、後からの反省として、この上のピークの登下降もそこそこ悪かったので、残すとしたら、その箇所だった。ハーケンが2枚残っていたので誰かがビレイポイントとして使用したと思われる。風が相変わらず強かったが、明け方よりはマシになっている。稜線直下の稜線もクラストして歩きやすくなってきて快調に進む。時々ホワイトアウトして全く見えなくなった時もあったが、ガスが薄くなった瞬間を逃さず方向を見定め進むと少しずつ斜度が落ちてきて、南岳小屋に到着。さすがに稜線は風が今まで以上に強く、フラフラしながら進む。すぐそこの頂上に行くのも嫌になるくらいの風の中、気持ちを奮い立たせて歩み、10時45分頂上に到着。この時間から視界が開け、天気が良くなってきた。ただ、さきほど南岳小屋辺りよりも、更に風が強くとても感動に浸っている余裕がない。即刻下山を開始する。南岳小屋から西尾根に入る箇所では正面から受ける突風で前が見えずに、何度も立ち止まって、風を背中にして、やり過ごし緩んだ瞬間に我慢して下降する。あまりにも風当りが強すぎて顔面凍傷になってしまった。いくらか高度を下げると条件が緩和され安堵する。FIXにしておけば良かったという悪い箇所はNが先行して下りていき、持っているスリング全てを総動員して、メンバーに一応セルフをとって通過させる。マッチ箱のFIXを回収し、デルタ岩壁を向かって左側の灌木(残置捨て縄あり)で50mザイル折り返しの1ピッチ懸垂をし、その下の悪い箇所も慎重にバックステップで下降して樹林帯に入る。ところどころ消えた踏み跡を辿ると、まもなくBCに戻る。今晩は豪華にいこうと夕食前に、棒ラーメン2人前・松茸ご飯1人前の予備食を前菜に、メインディッシュのウマ塩鍋キューブ雑炊を食べて就寝した。
(2日)適当に起きようと思っていたが、早寝なので3時に起床してしまう。朝食のキムチ鍋キューブ雑炊(α米3人前+鍋キューブ2個が黄金比率として判明。だいぶ腕をあげたようだ)を食べて、下降開始。この日も朝から快晴。トレースが薄っすら残っていたが、まもなく、それもなくなり適当に尾根上を選んで下降、一般登山道に出た。後は、高速道路となった右俣登山道を歩いて新穂高へ。Nは途中から八ヶ岳で捻挫した左足首が再び痛みだし、我慢しながらゆっくり下った。駐車場の車の雪も10cm程度しかなく、すぐに車を動かすことができ、平湯の森経由で帰広した。(記録:N)
【感想】
(N)地道なトレーニングを全員で積むことで、大きな山に入る関係性を構築することができた。非常に大切なことだと思う。ケガに悩まされた年だったが、我慢して登っていい結果が得られて良かった。天候・食料・装備等タクティクスも完璧であり、軽度の凍傷は負ったものの、良い山行ができたと思っております。H君については、時間を要した雪混じりの岩場の登下降技術、また雪上訓練等、まだまだ体得しなければいけないことが多いが、大切に育てていけたらと思います。山岳会はこうした活動を脈々と受継ぎ伝統にしていくことが大切だと思っております。ユースのこれからの人材に厳冬期の北アルプスの経験を残してあげることができて、本当に良かったのと、この経験から何かを得てもらえ、そして受継ぎ次のリーダーとして育ってもらえたら、本山行の意味を成すものだと思います。
(O)年末年始を北アルプスで初めて過ごした。入山前に降った雪はなかなか固まらずラッセルは疲れた。2700m以降は何度か立ち止まる場面があったが、その間も吹雪にさらされて寒かった。計画通りに進んで、無事に帰ってこられて良かった。
(H) (1日目)体調は絶好調。荷物の軽量化に努めたこともあり、林道を良いペースで動けた。しかし、周りが見えてなく(雪崩の可能性がある沢筋のトラバース)、Nさんから注意があった。取付からのラッセルは、今までの山行よりも深く、前に進むのに時間がかかった。折角なので楽しまないといけないと思いながらラッセルをした。テント生活では、ガソリンバーナーが暖かく快適だったので、ユースの共同装備として是非検討をお願いします。
(2日目)前日からの風が強く吹いていた。緊張もしており不安な気持ちが高まっていた。睡眠は十分に確保することができ、体調はバッチリだった。最高においしい雑炊を食べ、出発した。途中なんともない平坦なところで、バランスを崩し1m程転がってしまった。ここで気合いを締めなおした。夢中になって登っていたのか、気づいたら8時半を過ぎていた。デルタ岩壁はロープを出してもらった。慎重に登り通過。その後のマッチ箱はフィックスを張ってもらい通過することができた。しかし、マッチ箱を通過してからが一番怖かったかもしれない。登ることはできたが、下りられるのかな?と薄っすら思いながら歩んでいった。槍穂の稜線が見えた時は、少し元気がでた。出発から風は強かったが、稜線に出た時は強烈だった。先頭のNさんが立ち止まっているのを見て山頂だと確信した。駆け寄り握手をし、抱き合った瞬間は忘れることはないだろう。足早に山頂を後に下山。吹き上げる風が突き刺さる。下山でやらかすと今までのことが台無しになるので細心の注意を払った。そして、テントが見えたとき、一安心した。すごくお腹も空きエネルギーを使ったことを実感した。
(3日目)睡眠をしっかりとれ、この日も体調はバッチリ。最後まで気を抜かないようにして下山した。トレーニングも含め、NさんとOさんには特に感謝をしています。たくさんのアドバイスをもらい、この山行に挑むことができました。これで終わることなく、日々トレーニングを重ね、山と向き合っていけたらいいなと思います。
以上