前穂高Ⅳ峰正面壁 北条=新村ルート(個人山行)

    【日程】2023年9月16日~18日

    【行程】

    09月15日 広島=16日早朝 あかんだな駐車場

    09月16日 07:40上高地BT-09:30徳沢園-11:30中畠新道分岐-14:50奥又白池BC

    09月17日 04:35 BC-07:30取付登攀開始-11:30登攀終了-12:00北尾根待機(O H)-

                    13:15北尾根(I K 合流)-14:40 5.6のコル-16:50奥又白池BC

    09月18日 04:35奥又BC-09:35上高地BT

    【参加者】:4名

     

    【登山概要】:リーダーO

     「前穂高Ⅳ峰正面壁」 「奥又白池」

     山の本や小説を読んでいると必ず出てくる心くすぐる言葉だ。いつかは行ってみたいと数年前から考えていたのですが今回漸く実施となった。元々は「ユースの50歳以上パーティー」4人で初めて組んでみようと計画を練り始めたのですが結局、日程が合わず50歳51歳26歳24歳となり、まるで長男次男を連れた家族のようなパーティーとなった。東海支部のK君には一ヶ月に及ぶ3000m峰全山縦走中の途中で、このパーティーに合流をしてくれた事を感謝します。

     仕事の都合で札幌から広島空港へ戻ってきてIさんと合流、スーツのまま出発。途中、H君を拾い北アルプスを目指す。始発の上高地行きに乗りたかったが、あかんだな駐車場に到着したのは6時を過ぎていた。バス乗り場に行くと100人ぐらいの行列が出来ていた。チケットをIさんに買いに行ってもらい、バスの行列に並ぶ。幸い2台目のバスの乗車、目を覚ますと4年ぶりの上高地に到着していた。別行動で昼過ぎぐらいに奥又白池に到着予定のペコを余り待たせたくもないので、早速出発。久しぶりの重荷に次々のハイカーに抜かれていく。ソフトクリームを早速食べたりしながら4時間ほどで漸く中畠新道分岐に到着。休憩をしている関西の山岳会クライマー5人と合流、なんと一人は79歳である。暫く談笑、とても山に詳しくエベレストや海外の山にも登っているそうだ。帰広後、調べて見ると4年前にも未踏峰キュンカ・リ南西壁(6578m)に挑戦している国内外プロガイドの凄い人だった。分岐からは左に松高ルンゼを見ながら尾根に入りひたすら急登を詰めて行き、開けた空に抜けた瞬間に目の前に奥又白池が現れた。既に数張りのテントが張ってあり、ペコが池の傍から「おーい」と手を振っている。やっと歩荷から解放されホッとした瞬間だった。

     久しぶりの再会を楽しみながら夕食を食べていると夕立がやってきて、慌てて各自のテントへ避難。そのまま消灯となってしまい残念だったが明日に備えて体力の回復を願いながら眠った。深夜にも何度か雨がテントを叩いた。

     3時30分起床、テキパキと朝食と準備を済ませる。5時出発予定だったが、4時半には全員が準備を整えていた。素晴らしい。まだ真っ暗だがヘッデンの明かりを頼りに前日に見当を付けていた踏み跡に入る。朝露が靴やパンツを濡らす。違う処に行くのだろうと思うヘッデンの光が上方に二人、後方から二人、我々と違うルートから取り付きを目指す20分ほど先に出発した隣のテントだった4人のライトが見える。C沢へ入る踏み跡あたりで少し休憩しC沢のトラバースに入る。20分先に出たC沢経由の4人にほぼ追いつく。我々のルートの方がどうやら早いようだ。昨日の話しでは、4人は北条・新村と松高に分かれて登ると行っていたので、このままだと先に取り付きに着けそうだ。落石だらけの沢や滑りまくる草付きをトラバースし進んで行くと、谷に入っていく岩場が現れ上方に目印となるチョックストーンが現れた。チョックストーンはあまりにもデカく、チョックストーンには見えないが写真に撮ってみるとチョックストーンだった。右側を登り草付きを登ると頭に叩き込んでいた取付に到着。殆ど迷いはしなかったが途中の待機などで予定より1時間遅れの3時間で取り付きに着いた。取付には途中で先に行ってもらった二人組の1パーティーが登り始める準備をしていたので我々はゆっくり待機となった。遠くに富士山も見え絶景だ。隣のテントの4人は全員が松高ルートに行ったようだ。後続パーティーもいなくなり焦る必要もなくなった。前のパーティーも、まあまあ時間が掛かりフォローが登り始める。落石も怖いので少し様子見してO Hパーティーから登攀開始、いつもだが初めての岩場の最初のピッチはビビる。岩は固く、動く石も余りないので少しずつ安心しながらロープを伸ばす。前のパーティーは2ピッチを一気にいったらしく、もう見えないのでルーファイしながら登って行くと、4人ぐらい立てそうな棚が現れ、リングボルトが3つの終了点があった。フォローのHを引き上げる。クライミングが今年の2月ぶりというHは「メチャメチャ怖かった!」と言いながら登ってくる。2ピッチ目は3級30m、Hが登り始める。スルスルとロープは伸びていく。ロープ半分を超えても止まらない、残り10、15と結局、50m一杯まで、Hは伸ばしていった。3ピッチ目の中間の終了点まで進んだようだ。次のピッチは簡単なチムニーを越えると核心ピッチがあるハイマツテラスに出た。ここで先行者に追いつき暫く待機、しかし暑い。9月半ばで2,500mを越えた地点で、この暑さはどうなんだろう。影は無く照りつける太陽がジワジワと体力と集中力を奪っていく。核心のハングで先行パーティーは苦労している。I、Kパーティーも追いついてきて4人で日差しに当たりながら待つ。先行パーティーが次のピッチに移ったのを確認後、Hがスタート。荷物を背負ってでは、超えられそうにないので、一つのザックに纏め、フォローのOが背負う。核心ピッチはハングが2つ連続する。一つ目のハングも難しい。核心箇所には古い残置スリングやアブミの為であろうハーケンが多数打たれ見るからに苦労の跡が見える。空荷登攀のも一つ目から苦労している。高度感もあり怖い。一つ目のハングを気合いで超え、核心のハングへ。難しさからか、怖さからロープをカラビナに掛ける時にパニック気味になり、変な風にロープが掛かってしまいロープの動きが悪くなり敢え無くテンション。その後、しっかり休憩し、下からの声援の力も借りて見事ハングを超えた。素晴らしい!その後のトラバースも難しそうで、時間をかけながら核心ピッチの終了点に着いた。下から皆で「よく頑張った!」と声援を送った。次のピッチはトポでは一番、グレードの高いⅣ+、長いトラバースをしてカンテを登る。核心だと思われる箇所に長い残置スリングがぶら下がっているが劣化し解れ、触るとすぐにバラバラになりそうな感じだ。結んであるハーケンも怪しい感じだ。高度感抜群で恐怖度が凄いが慎重に超えカンテを登るとテラスに出た。あと1ピッチ、最後のピッチはルートがわかりにくいが難しくはなく、O、パーティーは全ピッチ終了。終了点はあまり寛げる感じでもなかったので、トランシーバーで後続に北尾根の稜線で待つと伝え、アプローチシューズに履き替えロープを結び合ったまま移動、少し登りずっとトラバースして行くとガレガレの北尾根に出た。久しぶり?初めて?本チャンでロープを結び合ったHと固く握手をしてロープを解いた。眼下には涸沢のテント村が見え、ザイゼングラードや穂高の稜線が美しい。下って行く予定の北尾根を見ると、こんなガレた場所を降りるのかと思える稜線だ。I、Kパーティーは、少しルートミスをしたのか、まだこない。結局、1時間半ぐらい待って4人が揃った。ここで東海支部のペコとはお別れとなる。彼は3,000m縦走中、このまま北尾根を登り前穂の頂上を踏み、ベースの涸沢に戻るという事だ。素晴らしい体力と行動力だ。名残惜しいが皆で握手してペコとはお別れ、北尾根を登っていく姿を見送り、広島の3人は5.6のコルを目指す。わかりにくい踏み跡を外さないように気をつけながら下ってくる。途中、下れない事はないが危ない感じの場所があり、60mロープでコルまでラッペル。その後は、そこまで悪くなく5.6のコルへ到着。コルは広くビバーク跡がたくさんある。そこから奥又白池BCまで長かった、ガレ沢のトラバース、草付きトラバース、急登ありとヘトヘトになりながら戻った。約2時間掛かった。朝、出発し12時間を超える行動時間を漸く終えた。登攀中、上空には絶えずヘリが飛び交い、我々の隣のルートを登っていた隣のテントの方も落石がヒットしてへリに運ばれていった。大きな怪我でないようにと祈りながらBCに戻ると、どうやら手の負傷だけで済んだと聞きホッとする。一気に空腹と疲れもやってきて、食事後、消灯。翌日も3時半に起床、テントの片付けもある中、4時半にはパッキングも終わり出発準備完了。ヘッデンの光を頼りに上高地を向かった。

    【ヒヤリハット報告】

     なし