ユースクラブ8月例会<北アルプス 高瀬渓谷、湯俣川>
【日程】2018年8月11~14日
【行程】
11日 広島=
12日 =七倉(タクシー)高瀬ダム-湯俣温泉-湯俣川遡行-ワリモ沢出合(幕営)
13日 幕営地-湯俣川遡行-硫黄沢出合-湯俣川下降-ワリモ沢出合(幕営)
14日 幕営地-湯俣川下降-湯俣温泉-高瀬ダム(下山・タクシー)七倉=広島
【参加者】4名
【登山概況】 例会担当リーダー(安松崇)
近年の異常気象で、日本列島は7月の大雨が一転、大変な猛暑を迎えている。我々は炎熱地獄を脱出すべく、沢泊の計画を立てた。その沢の奥地には色とりどりの温泉が湧いているという噂である。
お盆期間の天気は、基本的には高気圧に覆われるものの、大気の状態が大変不安定な模様。一度沢に入ったら、通信手段もなければ、エスケープ手段も少ない。増水の不安を抱えながら、一路現地に向かう。帰省渋滞にも巻き込まれず、予定より早く七倉に到着。タクシーに乗り換え、8万個の石が積み上がっているという高瀬ダムの堰堤上に到着した。
異常気象は、高瀬川でも例外ではないようだ。7月の大雨で、青嵐荘までの登山道も一部が崩れていた。冷涼なダム湖畔の長いトンネル抜け、仮復旧された登山道を青嵐荘まで歩く。荷物さえ少なければ、雰囲気の良い森林のハイキング道である。青嵐荘前の吊橋も崩壊し流されているので、渡渉が必要ではあるが、水の流れはチョロチョロで、普通の登山靴で渡り、青嵐荘に到着。ここで、沢装備にチェンジする。
青嵐荘すぐ上の堰堤を越えると、高瀬川は水俣川、湯俣川と分かれる。いよいよと湯俣川に入るやいなや、そこら中に湧き出る温泉と噴湯丘のお出迎えである。胸を踊らせながら歩みを進める。
遡行は、歩きやすい河原を求めて、右岸に左岸に、渡渉の連続であった。できるだけ、水深が浅いところを見極めながら、渡渉地点を探す。それでも膝上程度の水深が深いところは、スクラム渡渉なら一人だけでは得られない安定感と安心感がある。
事前の調査で第1吊橋付近の大岩の通過がこのルートの核心部の様であった。上部を巻くルートは、フィックスロープはあるが、斜面が割と最近崩れたようであり、沢沿いをへつるルートを選択した。念のため、30mロープを出す。水深は最大で腰程度で、この水量であればさほど、困難ではなかった。
その後も、スクラムとロープを駆使し、渡渉を繰り返す。この日だけでも数十回の渡渉をした。今回の沢では10mのフローティングロープが、ササッと出せるので非常に有効であった。
ワリモ沢出合のビバーク地は、出合の手前の丘にあり、地面はフラット、林の中でタープを簡単に張ることができる。晩ごはんを食べ、床につくと突如として大雨が襲う。しかし、しっかり張られたタープと、シュラフカバーの威力で、寝不足もあり、皆すぐに夢の中であったようだ。
2日目は、弥助沢付近まで行きビバークする予定であったが、天候が不安であることや諸条件を考慮し、この地をベースキャンプとし、硫黄沢出合付近まで往復することにした。昨夜の大雨で増水が心配であったが、それほど増えた様子もないので出発する。少しずつ岩の段差が大きくなる。東硫黄沢の出合に到着し付近を捜索すると、ついに念願の秘湯温泉を発見した。黒、緑、白の色とりどりの温泉が湧いていた。大休止とし湯浴みに興じる。この日は、さらに硫黄沢出合付近まで遡行し、折り返した。帰り際に熊のモノとおぼしき排泄物を発見。程なくして、山の斜面に熊本体も発見する。ビバーク地に置いてきた食料が急に心配になったが、無事であった。
最終日は、来た沢を戻る。途中、登りでロープを出した大岩は、上部より懸垂下降で降りる。青嵐荘まで到着し、沢装備を解除する。濡れた沢装備を背負うと重たい。高瀬ダムまでの道のりが非常に長く感じた。
3日間を通じて天候が不安定で、午後からは雨もよく降った。幸い山の許容量の範囲であったようだが、判断は難しい。
沢泊まりは、ほとんどのメンバーが初めてであったが、装備品の選定や、生活技術など、ベテランメンバーの知恵には目から鱗であった。事前にいろいろと想定したが、やはり何事も経験であると感じた。
困難な滝などはないが、景色の雄大さ、迫りくるゴルジュ、花崗岩の結晶と硫黄成分でエメラルドグリーンに輝いた水面、変化に富み、また来たいと思う沢であった。
【ヒヤリハット報告】
・ザックの雨蓋に挟んだロープが渡渉中に落下し流出しかけた。
(対策)ロープ(荷物)のセルフをとる。
・懸垂下降中に落石があり、握り拳大の石が下降者のヘルメットに直撃。幸い怪我はなかった。ロープにあたった石が落ちた模様。
(対策)懸垂下降場所を慎重に選定する。落ちそうな石は、下部が安全である場合はあらかじめ落とす。
・スクラム渡渉中に体勢が崩れ、流されそうになった。
(対策)慣れた頃に十分に注意する。