ユースクラブ全国安全登山普及講習会<剱岳>
【日程】2015年9月21日~23日
【参加者】田邊、安松
【行程】夏山前進基地 - 長次郎谷出合 – 五・六のコル – 六峰 – 七峰 – 八ツ峰- 八ツ峰の頭- 池ノ谷乗越 – 劔岳本峰 – 武蔵のコル – 夏山前進基地
9/21(火)
朝4時、夏山前進基地。
天候・視界ともに良好で、満点の星と尾根を連ねるヘッドライトがクリアに見える。
菊池-竹内P, 田邊-安松, 佐々木-涌島P, 棚橋Gの順で列を作り、20分ほど下る。
剣沢雪渓に入り、すぐにアイゼン、ピッケルを装着。
4時55分、長次郎谷出合。源次郎尾根へ向かうヘッデンが見える。
徐々に明るくなり、雪面形状がはっきりわかるようになる。
見渡す限り延々と雪渓が続く。
半分ほどつめたところで雪渓が途切れ、岩塊、ザレ道を登る。
次第に傾斜がきつくなる。
6時38分、ⅤⅥのコル。
各パーティー、コンティニュアスのセットをする。
菊池-竹内Pから登攀開始。
続いて棚橋-田邊-安松P。先頭は棚橋G。
ガリーを登る。スタンスは豊富で安定している。
岩角があれば万を期してアンカーをとる。
移動中はなるべくロープにテンションがかかるように指示されるが、ペースが合わずなかなか難しい。
最後は涌島-佐々木P。
少しのぼるとテラスに出る。
横を見ると本峰に突き上げる源次郎尾根、後ろを振り見るとⅤ峰。
Ⅴ峰は天を衝くピナクルが印象的だ。
8時、Ⅵ峰登頂。
展望が開け、八ツ峰の主役たちが姿を現す。
クレオパトラニードル、チンネ、八ツ峰の頭、本峰、いずれも雄々しく存在感がある。
Ⅶ峰に向けてラッペル。
支点にロープをセットする直前で中央に結び目ができていることが分かる。
ロープの解き方が悪かったためだ。結び目はそのままにし懸垂開始。
回収時に引っ張るロープを間違えると結び目が支点にひっかかり登り返しが必要になるが、セルフビレイで使っていたカラビナに引っ張る側のロープを通すことでミスを防止した。
ダブルロープでのラッペル時に役立つテクニックだ。
9時15分、Ⅶ峰登頂。
ルンゼを進み、10時Ⅷ峰登頂。
登路には今にもはがれそうな石がたくさんある。
棚橋Gから岩は決して引かず、押し付けながら登るように意識するようにアドバイスを受ける。
ジムや鎖場の安定した岩場などで岩を引きながら登るくせがついているため、ぎこちない動きになる。
2段階懸垂をして八ツ峰の頭へ。
10時52分八ツ峰の頭。
眼下をパーティーが歩いているので落石に注意しながら池ノ谷乗越へ。
11時34分、池ノ谷乗越。北方稜線に入る。
眼前に大きな岩盤がそそりたつ。
左にルンゼ、中央、右にそれぞれ小さな凹状。
コル-取りつき間バンドの中間にある支点を使い、
確保しながら一番右の凹状を登る。
基部に塗られたペンキは中央の凹状を進むよう指示しているように見える。
先行パーティーは左のルンゼを登っていたが、
ペースが遅く苦戦していた。落石の音も頻繁に聞こえた。
池ノ谷の頭、長次郎の頭、長次郎のコルを越えて、12時47分本峰登頂。
偶然にも源次郎尾根を登攀していた広島支部ユース隊とばったり。
13時10分下山開始。別山尾根を下る。
スタンスはしっかりしているものの高度感があり緊張は続く。
一般登山ルートといえども気を抜くことはできない。
前劔を越えて、14時、武蔵のコル。
少し歩き一服劔に到着。一服する。
劔山荘、劔沢TSを経由して、15時50分夏山前進基地到着。
全体を通して、技術的にそれほど難しいポイントはなかったが、
ザレ場・浮石が多く、兎にも角にも落石に気をつかうルートであった。
また、行動時間が10時間超のロングルート。
今回は条件が揃い心地よい山行であったが、
天候急変や渋滞、ルートファインディングミスが起きるとすぐにタイムアウト。
事前の情報収集を徹底し想定外の事態に対応できる体力と登攀技術を身につけなければということを強く実感した1日だった。
(記:田邊 皇紀)
【コースタイム】
4:00 夏山前進基地 – 4:55 長次郎谷出合 – 6:38 五・六のコル – 8:00 六峰 – 9:15 七峰 – 10:00 八峰- 10:52 八ツ峰の頭- 11:34 池ノ谷乗越 – 12:47=13:10 劔岳本峰 – 14:00 武蔵のコル – 15:50 夏山前進基地
【ガイド、他メンバーからのアドバイス】
・セルフビレイは異本的にメインロープでとる
①パートナーが落ちた時にセルフビレイを解除して救助しにいけるように。
メインロープ以外でとっていると、メインロープにひっぱられたときにセルフビレイ側に常にテンションがかかるため、
解除するのが難しくなる。
②支点に負荷をかけないため。
スリングやデイジーチェーンよりロープの方が伸張による衝撃力が大きい。
アルパインクライミング(本チャン)ではゲレンデや人工壁のような絶対に安心できる支点が存在しないため、
いかに支点に負荷をかけず登攀するかが事故をおこさないためのカギとなる。
・コンティニュアス(コンテ)は非常に難しい技術
もし使うなら岩角をアンカーにとるなど積極的にプロテクションをとるようにする。
落ちた時にどこかに引っかかって止まる可能性がでてくるというメリットがあるが、
トレードオフでパートナーを道連れにするリスクも。
・スタカットは時間がかかるので、
八ツ峰-北方稜線のような行動時間が長いルートの場合、
常時使用は現実的ではない。
・懸垂下降時のセット時間を短縮できるよう、
あらかじめロープを中央で半々にわけて、それぞれで束ねる。
・沢や人の少ないルートをいくときは懸垂下降の支点用に捨て縄をもつようにする。
・ダブルロープなどで結び目がついているときは、
あらかじめ決めた色のロープをひっぱれば回収できるようセットする。
赤系のロープをひけば回収できるようセットする、など。
・巻き道(トラバース)は行き止まりになることが多くはまりやすい。
・リードビレイのときは早めにロープ残量をコールする。
コールがぎりぎりになるといざトップが支点をとろうとしたときロープの余裕がなくなり、
別の支点を探さにいかなければならないという状況になるリスクがある。
・フェイスルートや見やすいルートばかり登っていると、
クラック、スラブルートなどシーケンスの読みにくいルートに対応できない。
・本チャンの岩場では登攀開始前にプロテクションをどこでとれるか読む習慣をつける。
・カムなど道具の使いこなしもできるようになるべき。
トポ図でピンが書かれてしてても、誰かが滑落したときの衝撃でピンが抜けていることがある。