ユースクラブ9月秋合宿 <北アルプス 剱岳>

    【山域・山名】  北アルプス 剱岳
    【日 程】2015年9月19日~23日

    【参加者】池本、森戸、古川、勝田、椋本、田村、東、安松、田村
    【行 程】
    19日  室堂-剣沢 テント設営
    20~22日  登攀(源次郎尾根、八ツ峰、本峰南壁 ほか)
    21~23日 (田邊・安松) JAC-YOUTH全国安全登山普及講習会参加
    23日  下山-室堂-広島
    【目 的】 メンバーの登攀力を高めると共に、正しい安全登山の技術を習得


    【日程】2015年9月20日
    【ルート】八ツ峰Ⅵ峰Cフェース剣稜会ルート
    【メンバー】 池本、森戸、田村、安松

    4:00 剱沢キャンプ場出発
    キャンプ場より30分程下ったところから、雪渓歩きとなる。アイゼンが気持よく効く。
    5:30 長次郎谷出合
    日が昇り始め、彼方に熊の岩が見える。雲一つない秋晴れである。
    途中Ⅰ・Ⅱのコル取付付近より雪渓が切れているため、アイゼンを外し登る。
    その後は、明瞭な踏み跡を辿り取付に到着する。
    8:50 Ⅵ峰Cフェース剣稜会ルート登攀開始
    シルバーウィーク真っ只中、ルートは上から下まで、人で埋まっている。
    2パーティー程、順番待ちをし登攀開始する。
    池本さんがトップで登り、ダブルロープで森戸さんと安松、バックロープを付け最後に田村さんを確保するシステムで登る。
    1P目、ホールド、スタンスはしっかりしており気持ちの良い登攀である。
    2P~3P目フォローで登る分には適度な難易度で快適に攀じ登る。ダブルロープでロープが絡まることがあった。振り返れば劔の岩々の絶景で気持ちが高揚する。
    4P目ナイフリッジをトラバース、安定はしているが高度感抜群で緊張する。その先がスタンスが多少小さく苦労した。
    5P目は比較的易しかった。登り切ると八ツ峰の荒々しい絶景が広がる。
    13:00 登攀終了
    3回懸垂下降。2回目は斜めに懸垂下降した。ガスがでたら、迷いそうであったし、実際先行パーティーは間違った方向へ降りていたようであった。
    15:00 Ⅴ・Ⅵのコル
    コルで雲が増えてくる。その時、僅かな時間であったがブロッケン現象が見られた。
    途中講習会打ち合わせのため先行し18:00頃に剱沢に到着した。
    20:00 全員帰着
    初めての剱岳。初めてのバリエーション。絶好の天気に恵まれ、荒々しい八ツ峰の岩峰群に期待と不安を胸に抱きながら、Ⅵ峰に向かう。
    初めての本チャンに緊張するも、登攀はフォローで登る分には快適であった。しかし、トップで登るのは全く別物になのであろう。
    長いアプローチ、ルートファインディング、支点構築、落石の危険。時間の管理については、今回のような連休の場合は順番待ちもあるし、ロープワークで手こずる場面もあった。一つ一つの動作を確実にしロスタイムをいかに減らすか。登攀の達成感があるとともに、危険も少なからず存在する。今回私はついて行くだけであったが、その世界を垣間見たような気がした。
    (記:安松 崇)


    【日程】2015年9月21日
    【ルート】剣沢-別山-剣御前小屋-剣御前-クロユリのコル-剣山荘-剣沢小屋-剣沢
    【メンバー】 池本、森戸、田村

    初日の16時間行動がたたり燃料切れの3名は、21日を休息日とし、せめてハイキングがてら、と剣沢近辺の散策を計画する。 15時には戻るとテントキーパーへ言い残し、9:30出発
    しかし、スローペースで歩き始めてすぐに上記計画は頓挫する。振り返った先頭の森戸さんの目が“別山はショートカットしよう”と語っている。もちろん後の2名も異論があるはずもなかった。
    1時間弱かけて別山乗越。人々がすがすがしい顔で休んでいる広場で、すでに疲労困憊の私達も小休止。
    ツアー客に周辺の山の説明中のガイドの破顔がまぶしい。
    説明版では剣御前の先は「通行禁止(BAD END)」の文字。手元の登山ガイドにも“一般者通行困難”しかし付近は雲に隠れ、登っている人は皆無。“見とがめられたらどうしよう”という日本人的な私の不安も隠れていき、(自己責任)と書いてある二人の背中を追う。頂上より先は、ストック納めて急な岩場の下り。
    踏み跡はあり、道もそう悪くはない。岩場で注意する程度。それでも本峰に比べるとかわいいものである。
    なぜ通行禁止?と疑問に感じながら進んでいく。
    突然、庭園が現れた。高山植物の群生が。秋のお花畑といった風情。
    天気が良ければ目前に剣岳、両眼下に剣沢・雷鳥平、背後に立山という絶好のロケーションである。
    ここでテント泊すれば、さえぎるもののない満点の星空であろう。 人の声も物音もない、全くの静寂。
    立入禁止で荒廃の進行を遅らせる?自然保護の観点から納得。とても素敵な場所発見!(ただし曇天)
    ここで2名の男性とすれ違う。対面の登山口には「BAD END」はないのか?(本日ニアミスこの2名のみ)
    岩場の登り下りを繰り返し、這松と格闘。尾根が崩壊した場所も数か所あり、足場が崩れると奈落の底、注意しながらゆっくり急いで。しかし、這松の手ごわいこと。ついに立っては進めず匍匐前進で。
    どのくらい進んだのか、だんだん道らしき踏み跡が消えていく。相変わらず雲が視界を隠し、現在地は不明。ただ、前方から人の声が時々かすかに聞こえる。おそらく剣山荘か。
    時間的にも・方角的にも、きっとこの下のはず!というベテラン二人の声を信じて下っていく。
    と、眼下に待ちに待った剣山荘が!気づくとすぐ下に道が平行に。どこから分かれていっていたのか。
    カレーやビールでごったがえす剣山荘で、われらもおでんとコーラを。うまい!!
    気づくともう結構な時間。「でも結果、予想通りの時間!」というと、『別山やめたの忘れとるやろ』
    そうでした、でもこのくらいが今の私にはちょうどよい。
    休息日の散策にしては少々ハードな、ユースクラブワンダーフォーゲル班の誕生を予感させる一日だった。
    (記:田村 貴代子)


    【日程】2015年9月21日
    【ルート】剱岳八ツ峰Ⅵ峰Cフェース剣稜会ルート登攀
    【メンバー】 古川、東、勝田

    朝3時起床、朝食後4時過ぎに出発。
    剣沢を下る。
    源次郎尾根の取り付きを過ぎたあたりでアイゼンを付けて下り、今度は長次郎谷を詰めていく。
    途中に雪渓が切れていたので巻いてさらに登っていく。
    7時半頃にⅥ峰Cフェース剣稜会ルート取付に到着。
    2組の先行パーティの順番を待ち、8時過ぎに登攀開始。
    シングルロープを2本使い1-1-1で登っていく。
    1ピッチ目 スラブⅡ級
    トップは古川さん。危なげない登りで登っていく。
    セカンドの東さんの登りを見ていると上部で「ラク!!」の声が聞こえる。
    ちょっとすると右のルンゼあたりを音をたてながら石が転がっていく。
    こっちではないなと安心していると虫の羽の音のようなブーンという音が聞こえ始め、ほんの一瞬で横を通り過ぎていった。
    あまりにも速すぎて近くなのか遠くなのかも分からなかったが一瞬凍りついてしまった。
    教訓、落ちてくる石は1つとは限らない…
    2ピッチ目 凹角からフェースⅡ級
    トップを自分と交代する。
    岩は安定していてガバも多く、はしごを登るかのように登っていける。
    最後の分岐で右左どちらでも行けるので迷ったが、右に支点が1つ見えたので右に行くと前のパーティが順番待ちしていた。
    左に安定した終了点があると聞き、そこでセカンドの東さんをビレイする。
    右に支点を取ったのでロープの流れが悪い…失敗した。
    3ピッチ目 フェースⅢ級
    古川さんリード。
    フェースを左に登っていき、さらにリッジを登って終了点。
    ごくたまにフレークのような岩もあるが比較的安定して登っていける。
    4ピッチ目 リッジトラバースⅡ級(Ⅲ級+?)+α
    事前にもらったトポで確認すると、剣綾会ルートの核心部は3ピッチ目のⅢ級のフェースだと思っていた。
    トップは自分。
    リッジを登り詰めたあたりで平行にトラバースしていく。
    このあたりから心の中でこれ本当にⅡ級か…?という思いが出始める。
    リッジ上部は薄く手で楽々持てる、というか割れるのではないかと不安もあるくらい薄い。
    その代わり持ち手がいい分足はあまりない。
    最初はリッジを持ちながらトラバースしていったのだが、だんだん上に体が上がっていき、あまり上がると持ち手がなくなるので一回下に降りながらトラバースしていく。
    後で聞くとセカンドの東さんはここで馬乗りになったらしい(笑)
    次第にリッジ上部が持てなくなるが代わり足の場所に平行に溝が現れる。
    そこを薄い持ち手を上手く使いながら渡っていく。
    渡りきったところで終了点が見えたので、ロープの残りを聞くと25m残っている。
    上を見るとテラス状の場所が見え、そこまでは充分ロープが足りると思いピッチを切らずに登ることにした。
    難しいところは何もないが、一度トラバースして屈曲したロープが重い。
    ロープに剥がされるかと思いながら馬車にでもなった気分でテラスまで登る。
    重い、もう、これ以上は無理だ。
    セルフを取りビレイを解除してもらいロープを引き上げるが、これが本当にきつい。
    セカンドのビレイの時も「ロープアップ!!」の声は聞こえるが、こっちも一生懸命やっている。
    もしかして登るよりビレイの方がきつかったのではないかと思った。
    しかし、セカンドの東さんも重いロープを付けてよく登ったものだ。
    彼女のパワーにはホント関心する。
    最後の古川さんが登ってきて終わりかと聞かれたが、まだ少し残ってそうだ。
    5ピッチ目
    そのまま古川さんが登ってみるが1ピン上でCフェース頂上だった。
    どうやら自分がほぼ2ピッチ分登ってしまったらしい。
    時間は12時過ぎ。
    ここからⅤ・Ⅵのコルまで下りていく。
    ラッペルの回数は3回、支点はハイマツから取ってある残置を利用。
    後から来たパーティは自分たちが3回ラッペルで下りたところを1回だけしかロープを出さず歩いて下りてくる。
    ガレ場の下りが嫌いな自分はとても無理だと思った。
    Ⅴ・Ⅵのコルに到着し休憩。
    行動食と水分補給を済ませⅤ・Ⅵのコルを下っていく。
    そのまま長次郎谷を下り、また剣沢を登っていく。
    剣沢のテント場に着いたのは17時くらい。
    約13時間行動となった。

    【反省点】
    ・やはり支点構築やシステム構築に時間がかかりすぎている。
    もっと無駄をなくし、早く正確に取れるようにしなくてはいけない。
    ・ダブルロープを使えるようにならなくてはいけない。
    1-2のシステムで登れば時間ももっと短縮できる。
    ・もっとガレ場に強くならなくてはいけない。
    膝周りの筋肉強化と体幹強化。
    ・個人的にはアルパイン用のクライミングシューズを買わないと、ボルダリング用をずっと履いて登っていると足が痛くて痛くて…
    (記:勝田 直樹)


    西から大きな高気圧が張り出して、5日間の好天気を思わせる。福山SAに予定通り8人集合、定刻に剱岳に向けて出発。福井県に入った頃予想外に雨が降り出す。ザック重量27Kg~18Kg1人当たり平均23Kg。立山駐車場から立山駅までは雨具を装備するが、室堂からの歩き出しには雲も切れはじめて、地獄谷方面に虹がかかりこれからの山行の幸運を予感させてくれた。ライチョウ沢を見下ろす位置まで来ると、立山頂上まで見えるほど晴れ上がり山麓から頂上に向かっての紅葉に見とれながら、まずは別山乗越を目指してキツイ登りになって行く。直登コースを選ぶ者、迂回路の尾根コースを選ぶ者に分かれて、それぞれ自分のペースに合わせて登って行く。大型連休で混雑が予想されるため足の速い古川が先に登ってテン場を確保。13時頃全員無事剱沢のテン場に到着、池本・森戸・田村・安松の4人は、2人がお世話になるのでJAC―YOUTH講習会前進基地に挨拶に行く。明日からの心地良い登攀を思いながら、雲が切れて行く夕焼けの剱を背景に夕食を囲い就寝。


    ★2日目(20日)午前3時起床、八つ峰6C組(池本・森戸・田村・安松)と剱本峰南壁A2組(勝田・東・古川・椋本)に分かれて出発。剣山荘あたりまで来るとまだ暗い中、一服剱の登山道がヘッドライトで数珠つなぎにも係わらず、一般ルートは思ったほど混雑も無く本峰南壁取り付きに到着。A1ルートは2パーティー・A2ルートは1パーティー8人、待ち時間を考慮してA2ルート(2級Ⅲ)に決定。前の8人パーティーは2・3・3の体制で登攀、最後の2人の内1人のビレイヤーがクルミ大の落石で左瞼を直撃、リードが1ピッチ目の上部約30~40mあたりでルートを右に外れた様子で頻繁に落石させていた。事故にあった女性は登攀を止めて同伴者1人と自力で下山。約50分待って、2・2体制まずは勝田リード・東セカンド(シングルロープ)。ルート取りが良いのか落石は全く無し、続いて古川リード・椋本セカンド(ダブルロープ)。1ピッチ目凹角を抜けると気持ちの良いフェースに続いてリッジ快適な登攀約40m。2ピッチ目約5mチムニーが悪い様子にも係わらず、リード東はキョンで通過。2組目のリード古川はチムニーを避けて右側カンテをレイバックで通過、続く椋本も気持ちの良いレイバックで通過、唯一の核心に思えた。3ピッチ目のリッジに鎮座している胴体くらいの岩に手をかけるのは、岩諸共落ちないかと不安を感じた。4ピッチ目は傾斜もゆるくなりハイマツも出て来て登攀終了。クライムシューズを登山靴に履き替え、ガレ場を登り途中から通常ルートに出てすぐ頂上到着。晴れ上がった頂上にて約40分休憩の後下山開始、4人無事16時40分テン場到着。田邊が今日からユース合流のためテン場に立ち寄る。別動隊八つ峰6C組19時30分頃帰着、4人中2人は疲れはてて食欲が無くお茶とスープで夕食を済ませ就寝。


    ★3日目(21日)八つ峰6C組(古川・勝田・東)予定通り出発。他、池本・森戸・田村は予定を変更して、9時50分頃剱御前縦走に出発。残る、椋本は剱沢テン場の東尾根を約1時間半散策。八つ峰6C組は17時頃帰着にて、全員そろい夕食後就寝。


    ★4日目(22日)午前3時起床、源次郎尾根(池本・森戸・古川・田村・椋本)へ出発。残る東は下山・勝田は予定を変更して、別山尾根から立山(雄山)へ登山。源次郎尾根組は5時頃雪渓に到達、昨日まではザクザク状態の雪渓が今日はガチガチのツルツル状態、昨日までの判断でアイゼン無しで来ているので、慎重に足を進め約30分後に源次郎尾根取り付きに到着。ここからハイマツ・ダケカンバの樹林帯の急登に入り、すぐの所で岩場H10mに出る。古川トップでビレー、他4人が順次、本ロープ8ノット胴付けでクリアー。ハイマツ・ダケカンバの幹や枝をくぐり、又は乗り越えて2カ所目の岩場H10mに到達。池本トップでビレー、1回目同様順次クリアー、引き続き樹林帯急登、間もなくダケカンバは無くなり、ハイマツと風化した岩稜帯に変化して行き稜線に出ると、長次郎谷の対岸に八つ峰5・6のコルあたりが真正面近くに見えてきた。見晴の良い斜面を登り詰め第1峰2709mに到達。気持ちの良い岩稜尾根を過ぎると、第1峰と第2峰のコルへ急斜面を下ることになる。第1峰からコルを隔てて目で辿ると、第2峰の南側岩斜面と稜線境界の反対側北面にハイマツが急斜面を埋めている。その急な稜線境界を第2峰に向かって登り返し岩稜尾根を詰めると、約30mの懸垂下降場。ここまでに2パーティーに抜かれていたが、運良く待ち時間無しで懸垂下降が出来た。頑丈な鎖がセットして有り、森戸が50mダブルロープをセットしてロープダウン順次懸垂下降、所要時間約20分。後続パーティーは50mシングルロープで下部バンドへ降りて、残り約5mをロープ無しで降りていた。コルから風化した岩稜帯を登り返し約300mで剱頂上。頂上ではJAC講習のメンバーと安松・田邊が八つ峰から登攀して来ていて再会を喜びあう。13時10分下山開始、17時50分無事下山にて全員そろい夕食。源次郎尾根の途中で追いついて来た、池本、等の知人の瀧根氏パーティー3人とこちら6人と、みんなで持ち寄ったワイン・日本酒・ウイスキー・牡蠣の缶詰など酒盛りしながらの和やかな交流会、特に瀧根氏の豊富な山談議を興味深く聞かせてもらい、至福のひと時があっという間に過ぎてしまいました。


    ★5日目(23日)午前5時30分起床。今日は帰るだけ早速テント撤収し室堂へ向かって出発。バス・ケーブルカーも思ったほどの混雑も無く待ち時間もなく無事下山。途中吉峰温泉ゆーランドに立ち寄って5日間の垢を落とし一路広島へ。福山東IC手前の篠坂PAに全員集合し今回の合宿成功を喜びあって解散。
    (記:椋本 太造)